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「ねえ。――はやく。――患者ですわ」
「大きいやつだねえ」
練吉はそれなり黙つた。
どこかで、「営林署だ」といふ声が聞えた。そして、黒い人影は左手へ向けてぞろぞろと走つて行つた。何か叫び声のやうなものがその方で起つていた。
「さあて、帰るかな」
「さうですよ、あんた。銅の値が上つたさうですね、昨日も九州の方から礦山師が赤山を見に来たんです。あの山ぢあね、随分家屋敷をなくした者があるんですがね」
と、いきなり突きを喰はされた練吉は、神経的にさつと青ざめながら、反問した。
「それでは」
「やあ、来てますね」
「射撃たつて、あれはクレーとかいふものを射つんでせう。わたしはね、他に何か的まとでもあるのかと思つたら、何のことはない、小さなカワラケの皿をね、かうひよつと機械仕掛けでとばしてね、――そいつを射つんでせう。なるほどうまい仕掛けにはちがひないが、見ているとあつけないもんですな。それに音だつてね、景気よくないんですよ。ボスツといふやうな音でね」
「いや、これから往診に行くところだ」
と、大声で云ひ聞かせた。
「さうですね。さつきからどうもさうらしいと思つていたんですが、失礼しました」