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「お松ですか?お松は半之丞の子を生んでから、……」
「杉倉まで――」
控へ目に坐つて、注いだ茶碗を盆の上に揃へると、
「やっぱりチブスで?」
「いや別に忙しいこともありませんですよ」
感心したやうに呟くと、房一はくるりと向ふむきになつて歩き出した。
「そうしてそのお松と言う女は?」
「ふむ、ふむ」
と、云つた。
「いためた?」
途中で練吉と別れた房一は、道平の病気のために手の廻りかねていた患家先きへ二三軒立ち寄つているうちに、案外時間を喰つて、帰途についた時はもう暮れ方であつた。
「へえ。――ズブツとね」
「あ、ちがふ、ちがふ。さういふんぢやないんだよ。この辺へ来るわけぢやないよ。船は船だらうが、四国の松山といふ所へ収容所ができるらしいんだな。そこへ運ばれるんだ。――こんな所を通るわけぢやないよ」