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「いかんと云ふわけもあるまいさ」
「何んの。面倒だからこのまゝ行かう」
「小倉組といふと、下の工事場の方ですな」
「や、さあお上り下さい。さあ――」
「連れっ子をして行ったです。その子供がまたチブスになって、……」
「あの山に田地を注ぎこんで裸になつたのは三人、わしも知つとる」
「脚気の方は?」
「いや、――わしはそんなこたあ嫌ひだ」
練吉と房一は、川沿ひの路を、肩を並べて自転車を走らせていた。
房一はふと自分に返つて訊いた。
何のためか、どういふつもりか、練吉は矢庭に房一の肩をぐんと押した。そして、自分は逸早く溝をとび越して、土手を駆け上つた。下の方では、黒い一杯の人だかりの間からは何やら鋭い言葉を叫ぶ者がいた。練吉が駆け上つた後から、房一も本能的に溝をとび越えた。事態は緊迫していた。練吉が何をしでかすか知れない、といふ予感が閃いたので。
「ふむ、トンネルのハッパだな」
房一は苦が笑ひをした。